人間関係から生じる慢性的なストレスは、実際に細胞レベルで体を老化させるだけでなく、精神面や肉体面にも複合的に悪影響を与えている可能性が示されたのです。
まとめると、この研究結果が私たちに教える重要な点は、人間関係において最も注意すべきは単純に敵対的な人ではなく、むしろ支援的な面と敵対的な面を両方備えた「フレネミー」であるということです。
慢性的にストレスを与える複雑な人間関係こそが、私たちの細胞を老化させ、健康を大きく損なう可能性があるのです。
人間関係を「断捨離」することで細胞から健康になる

本研究は、人間関係の質が私たちの老化速度を左右しうることを初めて大規模データで示した重要な報告です。
以前から「友人が多い人は長生きする」「孤独は喫煙と同程度に身体に悪い」などと言われてきましたが、今回の結果はそれを裏付けつつ、新たに「友人の数だけでなく質が決定的に重要」であることを強調しています。
身の回りにいる厄介な人々の存在自体が、遺伝子レベルで老化を加速させる慢性的ストレス源になりうると証明されたからです。
興味深いことに、こうしたネガティブな関係は決して珍しくなく、大抵の人にとって日常的に直面している問題でもあります。
言い換えれば、多くの人が気づかぬうちに人間関係を通じた慢性ストレスにさらされており、それが積もり積もって体を老けさせ、様々な不調の一因となっている可能性があります。
では、この知見から私たちは何を学べるでしょうか。
まず第一に、健康長寿のためには「煙草を控えましょう」「野菜を食べましょう」といった従来の生活習慣改善に加えて、「人間関係を見直しましょう」という観点が欠かせないかもしれません。
研究者らは、ネガティブな人間関係が喫煙などの従来の健康リスク要因に匹敵するほど強力な慢性ストレス因子であり、公衆衛生上重要な課題であることを指摘しています。