この方法によって、「人間関係の特徴が生物学的な老化とどのように関係しているか」を客観的に調べることが可能となったのです。

では、実際にネガティブな人間関係は、生物学的な老化を加速するのでしょうか?

調査の結果は研究者の予想を超えるものでした。

まず明らかになったのは、ネガティブな影響を与える人物が非常に多くの人の身近に存在するということでした。

参加者のうち約60%近くが、少なくとも1人の困らせ役(ハスラー)を抱えていることが分かったのです。

また、参加者の身近な人々のうち、平均すると約4人に1人(25%)が何らかの形でストレスや困難を与える人物でした。

(※その内訳は単純な敵が5.1%でフレネミーは18.8%でした)

このことは、人間関係におけるストレスが特別なケースではなく、日常生活にありふれた問題であることを示しています。

そして、生物学的老化への影響はハスラー全般で見ても明らかでした。

まずハスラー全般として見ると、その人数が増えるごとに生物学的老化(GrimAge2)は平均で約0.213年(約2.5ヶ月)加速していました。

また、ハスラーの割合が50%を超えると、生物学的老化はさらに顕著に加速し、特に極端なケース(100%がハスラー)では約1.74年(約1年9ヶ月)という非常に大きな老化促進が確認されました。

(※周囲の人間関係の半数(50%)がハスラーである場合、生物学的な老化は平均で約0.51年加速しました)

しかし、この結果をさらに詳しく分析すると、全てのハスラーが同じように老化を進めているわけではありませんでした。

「単純な敵」は、生物学的な老化(GrimAge2指標、DunedinPACE指標)との関連が統計的に有意ではなく、生物学的な老化に目立った影響を与えていませんでした。

一方、支援もあるがストレスも与えてくる「フレネミー」は、生物学的老化と統計的に有意で明確な関連を示し、老化速度を加速させていました。