この複雑な関係は専門的には「アンビバレントな関係」と呼ばれていますが、一般的にはフレンド(友人)とエネミー(敵)を組み合わせた「フレネミー(frenemy)」という言葉で知られています。
フレネミーとは、普段は友人として支え合ったり協力したりすることもある一方で、批判や嫉妬、対抗心など、ネガティブな感情やストレスも抱えてしまうような相手のことです。
例えば、親しいはずの友人が時折あなたの欠点を指摘してきたり、同僚と仕事を協力しながらも密かに競い合っていたりするような状況がこれにあたります。
また、家族や昔からの友人など、簡単に関係を断つことが難しい間柄ほど、こうした複雑な関係が生じやすいと言われています。
これまでは、「明らかに敵対的な関係」、例えば明確ないじめや嫌がらせを受ける場合については詳しく研究されていましたが、支えになることもある複雑な関係が私たちの健康や老化に与える影響については十分に知られていませんでした。
ポジティブな関係が健康を守り、完全にネガティブな関係が健康を害するという単純な理解では説明できないこの問題に対して、今回の研究者たちは、「複雑で曖昧な関係性が老化や健康に与える影響」を明らかにしようと考えました。
果たして、このフレネミーと呼ばれる「味方でもあり敵でもある」複雑な相手が、私たちの体に与える影響はどの程度のものなのでしょうか?
人間関係の「質」が老化速度を左右する

「フレネミー」と呼ばれる複雑な人間関係は、私たちの体をどれほど老化させるのか?
この問いを科学的に明らかにするため、研究者たちは米国のインディアナ州で暮らす幅広い年齢層の成人約2,200名を対象に、詳細な調査を行いました。
まず最初に、参加者は自分の身の回りの人間関係について振り返り、直近の半年間に頻繁に交流した人の名前を思いつく限り挙げました。