にもかかわらず、第2次トランプ政権発足当初のトランプは、政府効率化省長官という重要ポストについていた頃のイーロン・マスクに「南アフリカで白人ジェノサイドが進行している」というガセネタを吹き込まれて、事実をチェックもせずに信じこんでしまいました。
南アフリカ大統領をホワイトハウスに呼びつけて、「お前の国で白人ジェノサイドをやっているのはけしからん。すぐやめろ」と言って、突き付けた証拠写真なるものがコンゴ民主共和国の部族間抗争で亡くなった黒人たちの遺体を写したもので、南アフリカとは何の関係もないことがすぐにばれてしまいました。
このデマの出どころであるイーロン・マスクは、南アフリカでもエリート白人子弟が集まる、イギリスで言えばイートンやハーロウのようなパブリックスクールに当たる名門男子高校に通っていたお坊ちゃんです。
イーロン・マスクとしては祖父が愛していたアパルトヘイト時代の白人優位が失われていくことへの危機感から「白人ジェノサイド」というような根も葉もない大ウソをトランプに吹きこんだというだけのことでしょう。
駄ボラで済まないのは、どうやらマスクは祖父が構想していたテクネイト(テクノ+ステイト)・オブ・アメリカという拡張主義的なアメリカ再編論もトランプに吹き込んでいたようで、トランプはこれもまた信じてそのとおりに動いていることです。
第1次政権では内向型だったトランプが、第2次政権では打って変わってカナダも、メキシコも、パナマ運河も、グリーンランドもアメリカに編入すると言い張っているのは、ジョシュア・ハルデマンが思い描いていたテクネイト・オブ・アメリカを忠実に再現しようとしているとしか思えません。
「ウクライナでも中東でも大言壮語しながら、ちっとも和平への道を探れないでいるトランプが、自分から火ダネを増やすようなマネをするだろうか」と疑っていらっしゃる方も多いでしょう。