そして、資本主義的な経済発展ではイギリス、アメリカ、ドイツに後れを取ったとはいえ、先進国としての地位を守ったフランスが宗主国だった国々の先住民比率も深刻に低下しています。
イギリスの植民地だったアメリカのように、先住民はほぼ殲滅し、奴隷として使役するための労働力はそっくりまったく違った風土で生まれ育った黒人に入れ替えて監視コストを低くするという荒業を実施した旧フランス植民地はありませんでした。
ですが、旧フランス植民地で先住民族の総人口に占めるシェアがこんなに下がった国々が多いのは、経済合理性とは無縁の差別待遇がかなり大きかったのではないかと思います。
それに比べて、資本主義的経済発展競争でも、植民地獲得競争でも比較的早めに降りてしまったスペインは、先住民族の生き残り比率も比較的高く、白人と先住民の混血であるメスチソが軒並み人口比率で1位か2位になっています。
このへんの数値を見比べると、「資本主義経済の世界的発展には何ひとつやましいところはない」といったグローバル資本主義礼讃者たちのことばは、どうにもうつろに響くのですが。
カナダの課題は英仏バイリンガル化だけ?
同じ北米大陸の旧イギリス植民地でも、カナダはアメリカほど露骨な人種差別のないところだし、深刻な問題はフランス系国民がほんとうにイギリス系と対等になれるかだけだといった印象をお持ちの方も多いようです。
実際に南北戦争をきっかけとした奴隷解放以前には、たとえ南部の奴隷州から救い出した黒人でも北部の「自由州」でリンチに遭って殺されることもあるから、安全なカナダまで送り届ける地下鉄道という組織が存在していました。
ただ、カナダに黒人奴隷制が定着しなかったのは、カナダ植民地の白人たちがアメリカの白人たちより人種的偏見が少なかったからというより、カナダには強制労働で大きな収穫の期待できる農作物を栽培できる気候風土がなかったからという要因のほうが大きそうです。