平均時給で16~24%の差はそれほど大きくないとお思いかもしれません。ですが、その差が少しずつでも毎年翌年以降のために資産を残せるか、その年の稼ぎをぎりぎり一杯その年のうちに遣わざるを得ないかの違いになって、資産形成では決定的な差になるのです。
下段がまさに、その大きな違いを示しています。こちらは白人世帯の平均資産が黒人世帯の平均資産の何倍かを追跡したグラフです。
さすがにまだ奴隷制が存在していた1860年から解放後5年経った1870年まででは、白人世帯の平均資産は黒人世帯の56倍から23倍に下がっています。
しかし、その後の歩みは遅々としたもので、1922年になっても10倍、1949年でも7倍でした。これまでのところ1983年の5倍が最低で、資産所得がないと苦しい金融資産インフレの中で2019年には6倍と格差が拡大してしまいました。
もし社会制度や暴力などの障害がなければ2019年の時点で格差は3.2倍まで縮小していたはずだというのですが、そもそも白人世帯の平均資産が黒人世帯の3.2倍にもなってしまうこと自体が、長すぎた奴隷制時代と人種差別時代の負の遺産と見るべきでしょう。
結局のところ、植民地帝国として成功した宗主国ほど、先住民の生き残り確率が低いという残酷な事実が次の表から浮かび上がってきます。
ご覧のとおり、旧イギリス植民地はニュージーランドを唯一の例外として、先住民比率は最大のオーストラリアでも2.5%、アメリカが1.3%、カリブ海諸国の大半が0%と極端に低くなっています。
ニュージーランドだけ、先住民の中でも唯一マオリ族が14%と非常に高くなっているのは、ちょっと注釈が必要です。
ニュージーランドでは人種民族系統が自己申告制で、しかもニュージーランドの白人のあいだで先住民各部族中もっとも尚武の気風の強いマオリ族にあこがれて、マオリを名乗る人が多いので、この数字になっているようです。