なぜ黒人にはきつく汚く低賃金の仕事をさせ続けるのかの理由として、「黒人は元々知的能力が低い」とか「自分でもあまり責任を持たずにやれる程度の仕事をやりたがるから、そういう仕事に黒人が集中する」といった人種的偏見が持ち出されるわけです。

生まれ育った環境や受けることのできた教育を無視したままの「能力主義」は、常に人種差別の隠れ蓑となる危険を伴っているのです。

下段は、1850年の時点でたとえすでに自由民になっていた黒人にも自由に住む場所を選ぶ権利を与えていなかったことがはっきりわかる黒人中の自由民比率の分布地図になっています。

もし黒人自由民がほんとうに自由に居住地を選んで棲み分けていたら、この地図では青緑色になっている自由民比率が10.1~99%という地域がこんなに狭くなるはずはないでしょう。

しかし現実には、南部諸州から西部開拓時代にアメリカの版図に収まった地域のうちカリフォルニア州を除く大部分が黒人自由民は2%以下になっています。この黄色の地域では黒人を見ればほぼ確実にだれかの所有している奴隷なのです。

逆に、濃紺に塗り分けたカリフォルニア州とニューイングランド諸州プラス中西部諸州では、黒人自由民人口99.1%以上になっていて、この地域で黒人を見れば、ほぼ確実に自由民なのです。

これは、黒人を見れば自動的に奴隷と判断できる土地をできるかぎり広く温存して、黒人奴隷の監視コストを低く保つための、強引な「棲ませ分け」でしょう。

そして、こうした工夫を凝らして奴隷解放以後も延々と黒人を低い身分のままに放置してきた咎めは、21世紀も4分の1が過ぎた現代になっても解消されずに残っているのです。

上段は白人と黒人の時給格差ですが、1980年代以降いわゆるニューリベラルズムの時代にむしろ拡大し、かなり長期にわたって20%以上の格差が続き、国際金融危機以降やっと緩やかな縮小に転じて直近でやっと16%台に下がったことが分かります。