当然のことながら、『オッペンハイマー』の日本公開は見送りとなり、遂には日本法人が謝罪する騒ぎにまで発展しました。

アメリカは日本の降伏が分かっていながら、戦後処理を自己に有利にするために原爆を投下したというのは──私も含めて──多くの日本人の認識でしょう。

では、なぜアメリカ人は現在に至るまで、このように原爆投下を正当化したくなるのか。

それは、かつてトルーマン大統領が述べとおり、「50万人のアメリカ人の若者(兵士)の命が救われた」というストーリーを信じているからでしょう。言い換えれば、原爆投下がなければ、日本は降伏しなかったはず……ということです。

何回も繰り返すようですが、これは「特攻」などにより極めて頑強に日本が抵抗したからです。やはり、特攻には直接的な戦果を遙かに上回る、米軍に対する極めて強力な抑止効果があった……という結論にならざるを得ないのです。

金澤 正由樹(かなざわ まさゆき) 1960年代関東地方生まれ。山本七平氏の熱心な読者。社会人になってから、井沢元彦氏と池田信夫氏の著作に出会い、歴史に興味を持つ。以後、独自に日本と海外の文献を研究。コンピューターサイエンス専攻。数学教員免許、英検1級、TOEIC900点のホルダー。

『神風特攻隊のサイエンス:データが語る過小評価と続「空気の研究」の研究』