製造後にアイスクリームを適切に保存しないと、オズワルト熟成の影響で氷結晶が成長し、食感が悪化する可能性があるのです。

アイスクリーム作りはオズワルト熟成という物理現象をいかにうまくコントロールできるかにかかっているとも言えます。

そのためアイスクリームのレシピには材料に加えて温度変化の速度にかんする情報も含まなければなりません。

しかし新たな研究では、宇宙でレシピ通りにアイスクリームを作っても、地球と同じ食感にならない可能性が示されています。

宇宙アイスは食感が違う

なぜ宇宙で作ったアイスは地球産と食感が違うのか?

結論から言えば、主な原因は重力のあるなしとなります。

地球にあるアイスクリームの融けた部分を顕微鏡で拡大してみると、重力の影響を受けて比重の軽い成分は上側に、比重の重い成分は下側に移動していることがわかります。

しかし宇宙の無重力環境ではこのような比重による成分の分離が起こりにくくなります。

そのため地球と宇宙ではアイスクリームの成分分布に微妙な違いが生まれます。

特に融解と凍結が繰り返されやすい表面付近では、成分分布の微妙な違いが、オズワルト熟成の違い、つまり氷結晶の成長具合の違いとして現れると考えられます。

といってもそれを確認するために、国際宇宙ステーションにアイスクリーム製造機を持ち込んで、オズワルト熟成の違いを調べるのは非常にコストがかかります。

そこで新たな研究では無重力でのオズワルト熟成を再現するにあたり、レーザーを使いました。

実験ではまず水・油・界面活性剤・共界面活性剤という異なる4つの成分を含む混合液が用意されました。

アイスクリームの成分とは違いますが、オズワルト熟成の過程を調べるにはクリームや牛乳を使うよりもこの4種類のほうが適しています。

というのも、クリームや牛乳は不透明であり、内部で氷の結晶が成長する過程を観察するのが難しいからです。