教授: 国が力を入れていることにスタートアップの育成がある。それを株式市場に置き直してみれば新興市場の活性化となるが、現状の新興市場の状況はよくない。第一に公開会社数が減っている。上場を止めてしまう企業の方が多いから結果として公開企業数が減っている。公開のプロセスもやや不透明。初値天井や公開価格割れ。これは相場現象だから仕方ないのかもしれないが、創業者利得を手にした経営者が経営に興味をなくしてしまう。

“株式公開が目的だから、借金を返済して、これにて閉店”では本末転倒だと思う。株式公開が終点だと思っている経営者がいる。日本では起業ブームと株式公開の間に大きなギャップがある。起業家の多くは株式公開を考えていないし、公開を志向しているのは一発屋で変人扱いされているほんのひと握り※3)。

※3)日本政策金融公庫総合研究所のレポートによれば新規開業が10年後に目指す姿は次のようだ。

「全国展開や海外を目指す」は4.4%、逆に「自分だけ、もしくは自分と家族だけで小規模に経営する」が18.1%。「数人の従業員を雇用し、安定的に経営する」は40.3%もある。つまり、日本の開業の半分以上はベンチャーではないのである。そして、ベンチャーを装い、開業から上場に漕ぎつけても、そこで“自分のため”が露出する。彼は起業者ではあるが、日本の資本主義の再生には貢献しないし“新しい資本主義”のモデルでもないのである。

ワタナベ君:補足すれば、店頭市場はもともと証券業協会が運営するものでした。それが東証の再編で飲み込まれてしまいました。日本の証券業協会って、何を仕事にしているのでしょうね。東証のグロースになっても品位は改善していませんね。これは問題です。例えが適当かどうかですが、初等中等教育に問題があると、その国の教育制度はなかなかよくなりませんから。

教授:君は教育大卒で教員免許を持っているんだったね。確かに新興市場の問題は教育界のそれに似ているかもしれませんね。株式市場の改革はいろいろやったけど成功していないと思う。株式市場をわざわざ株式会社にするなんて、どうして!だよね。会員組織でやっていればいいのに、民法上の自由な社団法人からわざわざ証券取引法といういかめしい法律の下で認可法人となり、その結果、そして金融庁の傘の下に入るなんて。