教授:増資で得たお金(カネ)で銀行等からの借金を返済する!これは変だよね。銀行の融資は短期資金・運転資金、株式市場から調達するのは主に設備投資のための長期資金。資本主義の制度としても銀行制度⇒株式制度へと上向していく。もちろん発展した状況で併存するけど、「⇒」が示すのは資本の内的な論理だね。だから、増資で借金返済なんていったら株価が下がるのは当然。それは希薄化(Dilution、ダイリューション)そのものだから応募者も当然の反応をする。

ワタナベ君:未来社会では投機という行動はどうなるのですか。これは経済学を超えた問題のように思われます。人間の経済的行動のあり方ですから。個人的には競馬は好きですね。馬券をあれこれ予想して買って当ったら嬉しいですね。投機という要素を持たない株式市場は考えにくいように思います。この問題はこれくらいにして、その他の諸問題を短くお願いします。

教授:中央銀行と株式市場の位置関係を元に戻す。これは未来型をつくるときの必須条件だ。表現を変えれば、中央銀行、そして国家の干渉を弱め、将来的には止める。変動が激しくなると心配する向きもあるかもしれないが、自律運動に委ねた方が“8月暴落”のような事態は避けられる。

国家等の干渉を弱めることと対になっているのは、自主管理を強めること、建前では株式市場を運営するのは証券会社だ。彼らは自主組織である証券市場と協会を設立するが、それらの自主性は乏しいようだ。露骨に言えば強大な官庁に肥大化した金融庁に牛耳られている。東証の理事長は、かつては財務省の主要な天下りポストだし、自主組織の証券業協会にも既得権のように天下りポストがある。でも、これは逆に見れば、業界が国家を利用していることなのかもしれない。“いざという時にはお願いします”というわけだ。

ワタナベ君: 株式市場は、他の主要な市場と同じように資本のコモンズ(共有地)なのに、そこに金融庁が監視小屋を建てちゃう。そんなイメージですか。日本の場合、取引所も証券業協会もともに自主規制機関でこれに法律に基づく公的規制が重なる。それと自主規制の関係がそもそもわかりにくい。だからコモンズはお上に乗っ取られやすく、民間への復帰と自主機関としての再生への道は険しいようです。