教授:現在(t0)100の価値の資本の現在価値は、t1時点で10の利潤を生むとすると、現在利子率が3%なら100 +(10-3)=107になる。個人会社(非公開で株式会社形態を採用していない会社)が株式会社になり、さらにその株式を株式市場に公開すると、この現象が生じる。というのは株主が、制度が普及してくると、利子+リスクプレミアムしか要求しないからだ。利潤 >(利子+リスクプレミアム)なら、その差額を利子率で割った価が創業者利得になる。

本来、利潤生み資本であるものが、利子生み資本の尺度で評価替えされる際に創業者利得は突然出現するわけだ。

これに注目したのはヒルファディングだけど、彼の説明はだいたい次のようだ。

利潤=利子+企業者利得。しかし株主の貨幣資本化が一般化すると利子しか要求しない。それでは企業家利得がどこにいったのか?それが株式公開に際して一括して出現する。いわば創業利得は将来の企業者利得の一括先取りだ。

ヒルファディングはワイマール共和国で二度も大蔵大臣をやっただけあって現実感覚の鋭い人だった。彼のような人だからこそ創業利得を発見し、彼なりに説明できたのだと思う。

ワタナベ君:現在の公開ブームをリードしている基底も創業者利得ですね。一夜にして億万長者になるという魔法、しかも合法的ですね。これで現代の“にわか成金”が生み出される。

教授:公開株式が投資家の人気を集めるのは、この創業者利得のおこぼれに与ろうとしているからだ。それは非難すべきことではないけど、この問題が全体としての社会の不平等を生み出していることは確かだし、それが株式制度への根本的批判にもなっている。

私がここで言っておきたいのは、親子上場は創業者利得の“二重取り”じゃないの、ということだ。

ワタナベ君:公開会社は自らの上場の際に創業利得を得ている。子会社が上場すれば、その株式の大半を所有している親会社の株主は二度目の創業者利得を手にする。