こうした事情の下では、結論は妥当であるように思われます。
ただ、報道からは司法の認識がおかしいのではないか?と思わざるを得ないような部分も垣間見えます。
「トランスジェンダー当事者への発言だからダメ」という判示部分は、おかしい
トランスジェンダー市議に「おっさん」と発言 賠償命じる判決 | NHK | ジェンダー 2025年6月25日 19時07分
25日の判決で、名古屋地方裁判所の大竹敬人裁判長は「トランスジェンダー当事者の原告が『おっさん』ということばでやゆされること自体、名誉感情を損なうものだ。社会的に許容できる限度を超え、侮辱にあたると言わざるをえない」と指摘しました
NHKのこの記事では、名古屋地裁は市議がトランスジェンダー(女性)を自認しているから、それを理由に社会通念上許容限度を超える、などと認定しているとあります。
これはダメでしょう。
既述の通り、小嶋市議は性同一性障害の診断を受け、性別適合手術(生殖不能要件違憲判決の前)を行い性別取扱変更の手続もしている、覚悟を決めて生活している人です。
そのような者をからかう発言として社会通念上許容限度を超える、と認定するべきで、単に性自認がトランスジェンダー(女性)であるという主観的認識まで法的に保護するとするべきではないでしょう。 ※もっとも、社会的にジェンダーアイデンティティ=性同一性=性自認の理解が求められていることが、同僚市議の側の違法性を高める要素として考慮されることは妨げられないとかんがえる。
判例は、例えばいわゆる「経産省トランスジェンダートイレ事件」と呼ばれている勤務階とその上下階の女子トイレ使用にかかる行政措置要求判定取消事件の原告(性同一性障害の診断はあるが、性別適合手術はしていない。)に関する最高裁の法廷意見は、「性自認に基づいて社会生活を送る利益」とは書いていません。補足意見に見られるのみです。なお、判示中には「トランスジェンダー」の語は使われていません。