また、報告書では「脱調現象」に伴う電圧や周波数の振動も記録されている。日本の場合、脱調が検出された際には送電系統を分割したり、出力に振動が見られる発電機を停止させたりして、脱調の拡大を防ぐ保護装置が備えられている。しかし、スペイン側の報告書には、そうした装置に関する記述は見られなかった。

一般に、系統動揺の解析は日本よりもヨーロッパのほうが進んでいるとされるが、再エネの急速な導入により、系統動揺の解析や対策が追いついていないのではないかという疑問も残る。

自然エネルギー財団の切り取り報道

スペイン政府の報告書を受けて、自然エネルギー財団は早速反応し、「スペインにおいて自然エネルギーが電力供給の高い比率を占めていたことがブラックアウトの原因であるとする意見を否定し、複合的な要因による電圧制御の失敗によってブラックアウトが発生した」と記載している。

確かに、太陽光発電や風力発電が突如として異常動作を起こし、系統の電圧を乱してブラックアウトを引き起こしたわけではない。しかし、スペイン政府の報告書全体を注意深く読むと、「再生可能エネルギーの導入拡大により、系統から回転機(同期発電機)が締め出され、その結果として無効電力の調整機能が不足し、それが系統不安定化の原因となった」と明確に指摘している。

無効電力の大切さを訴えてもお金にならなければ導入はしない

系統電圧を安定的に調整するために必要な無効電力を十分に供給するには、再生可能エネルギー発電所に無効電力制御機能(スマートインバーター機能など)の搭載を義務づけることが、各国で検討されている。しかし、その導入には高コストが伴い、発電事業者にとって経済的インセンティブが乏しいのが実情である。最終的には、そのコストを誰かが負担しなければならず、電気料金の上昇要因となることも避けられない。

これまで日本では、再エネ導入拡大に向けた議論は、需給バランスや周波数調整など、有効電力の調整に関する検討が中心であった。しかし、今回のスペインでの大規模停電事故は、電圧や無効電力に関する調整の重要性を改めて示すものとなった。