この問題を社会に広く知らしめたのが、2014年3月8日、浦和レッズのサポーターが埼玉スタジアムのゲートに「JAPANESE ONLY」という差別的な横断幕を掲げた事件だ。クラブが試合終了までこれを撤去しなかったため、Jリーグは「クラブが差別的行為を許容、黙認した」と判断し、無観客試合(同年3月23日/清水エスパルス戦1-1)という厳しい処分を下した。この事件は写真がSNSで拡散されたことで広く知られることとなり、Jリーグのイメージを大きく損ねた。

FIFA(国際サッカー連盟)が2013年5月に採択した「人種差別主義及び人種差別撲滅に関する決議」を受けて、JFA(日本サッカー協会)は同年11月に規定を整備。それに合わせてJリーグも2014年に懲罰規定を整備し、差別的行為に対してより厳格に対処する姿勢を明確にした。


Jリーグ 写真:Getty Images

サポーター「劣化」は本当か?

では、Jリーグのサポーターはただ単に「劣化」したのだろうか。見方によってはあらゆる問題行動がSNSによって可視化されやすくなっただけで、大多数のサポーターはルールとマナーを守り、健全な応援を楽しんでいるという事実も忘れてはならない。問題のあるサポーターだけを例に挙げて、十把一絡げに結論付けるのは早計だ。足繫くスタジアムに通うファンであれば、その事実を知っているはずだ。

重要なのは、問題が起きた際に機能する自浄作用だ。前述の浦和サポーターによる「JAPANESE ONLY」事件後、浦和のサポーター自身が「俺たちの浦和レッズに差別主義者はいらない」という横断幕を掲げ、クラブやリーグも差別撲滅に向けた取り組みを強化した。この事件を契機に、Jリーグも差別撲滅に向けた取り組みを強化。クラブやサポーターに対し、いかなる差別的・侮辱的な行為も認めないとする方針を明確にし、違反者に対する厳しい処分を徹底している。