これは「私たちが人間らしくあるために必要なDNAの断片」が、かつてのウイルスの痕跡に由来している可能性を強く示しています。

この点についてマギル大学のギヨーム・ブルク教授は、「もし私たちのゲノムの中にある、人間や霊長類に特有な部分とウイルスに由来する部分をはっきりと区別できれば、私たちが『なぜ人間なのか』という根本的な問いに対する答えに近づくことができるでしょう。さらにDNAが健康や病気にどう影響するのかも、これまで以上に詳しく理解できるようになるでしょう」と強調しています。

今回の研究成果は、人類がゲノムという巨大な設計図を理解する新しい時代の幕開けとなるかもしれません。

これまで私たちが単なる「余白」と考えていた領域に新たな意味を見出すことで、「生命とは何か」、「人間とは何か」という私たちが抱く根源的な疑問に迫る、壮大な旅がはじまるのかもしれません。

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元論文

A phylogenetic approach uncovers cryptic endogenous retrovirus subfamilies in the primate lineage
https://doi.org/10.1126/sciadv.ads9164

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部