これまでの研究では、ウイルスDNAの分類は主に配列の類似度だけを基準にして行われていましたが、この方法ではDNA断片の微妙な違いや本来の関係性を見逃す恐れがありました。

そこで研究チームは、従来のやり方を根本的に見直し、進化的な系統関係(どのDNA断片がどの断片から派生したかという関係性)や、それぞれの断片が霊長類の種間でどれほど保存されているのか、という視点を取り入れた新しい手法を開発したのです。

具体的には、ヒトや霊長類のゲノムに含まれるMER11というウイルス由来のDNA配列に着目しました。

先にも述べたようにこのMER11は、比較的新しい時代(数千万年前)に霊長類の祖先のゲノムに入り込み、その後数千という単位でコピーを増やしていったもので、これまでMER11A・MER11B・MER11Cの3つのグループ(サブファミリー)に分類されていました。

しかし、新しい系統分類の方法を使って詳しく調べてみると、MER11は実はもっと細かな分類に分けられることが分かりました。

従来の3つのグループは再整理され、新たにMER11_G1、MER11_G2、MER11_G3、MER11_G4という4つのグループに分類されたのです。

この結果、それまでの分類法では約20%近く(正確には19.8%、412個)の配列が間違ったグループに入れられていたことが明らかになりました。

この新しい分類方法により、それぞれのMER11グループが、ゲノム内でどの染色体のどの領域に分布しているのかという特徴もより正確に理解できるようになりました。

さらに、それぞれの新しいグループには、DNAの化学修飾や転写因子の結合パターンといった、遺伝子がオンやオフになる際に重要な「エピジェネティックな特徴」にもはっきりとした違いが認められました。

つまり、この新分類法は単に分類を正確にしただけでなく、DNA配列が持つ機能的な性質の違いまで明確に浮かび上がらせることに成功したのです。