MER11は比較的新しい時代(数千万年前)に霊長類の先祖のゲノムに入り込んだと考えられている若いグループで、これまでMER11A、MER11B、MER11Cという3種類のサブファミリー(下位分類)に分けられてきました。
ところが、これらの分類は非常におおざっぱで、実際にはもっと細かく分類しなければならないほど、MER11の中には多様な特徴を持つ配列が存在する可能性が示されていました。
また、ヒトゲノムの解析が初めて行われた約25年前に作られた分類法や注釈(アノテーション)自体も、すでに古くなってしまっていることが指摘されていました。
そこで今回の研究チームは、このようなウイルス由来のDNA配列が「本当はどのような系統に分かれていて、どのような特徴や役割を持っているのか」を改めて調べることにしました。
日本の京都大学やカナダのマギル大学など、複数の国際的な研究機関が協力し、このMER11というウイルス由来の配列の正体を、進化の系統に基づいて徹底的に洗い直すことに取り組んだのです。
果たして、この古代のウイルスが私たちのゲノムに潜ませた謎のDNAは、現代の私たちにどのような影響を与えているのでしょうか?
そして、それらのDNA配列はどのようにして遺伝子を制御し、人間らしさに貢献しているのでしょうか?
DNAに潜むウイルスが「人間らしさ」を作っていた

古代のウイルスが私たちのゲノムに潜ませた謎のDNAは、現代の私たちにどのような影響を与えているのでしょうか?
これらのDNA配列は、具体的にどのように遺伝子を制御し、私たちが人間らしさを獲得する上でどんな役割を担っているのでしょうか?
こうした謎を解明するため、研究者たちはまず、ゲノムに散らばった膨大なウイルス由来のDNA断片を「正しく分類する方法」から見直すことにしました。