これは特に発展途上国や資金面・人手面に制約がある施設にとっても、心臓移植を実施する道を開くものとなります。

このように倫理的・経済的な障壁が下がることで、心臓移植の提供数が大幅に増えると期待されます。

ヴァンダービルト大学が実際に、この保存技術によって数年で数百件規模の新しい移植のチャンスを作り出していることが、それを裏付けています。

また、REUP法の技術は心臓だけに限らず、他の臓器への応用可能性も秘めています。

特に腎臓や肝臓、肺など、心臓と同じく循環停止後に急激に機能が低下する臓器にも、この技術を応用できる可能性があります。

今後の研究が進めば、REUP法を使った保存技術によって、これまで以上に多くの臓器が移植可能となり、多くの命を救える可能性が広がります。

さらに、この技術の小児への応用も期待されています。

子どもにとって適した臓器を得るのはさらに難しく、提供可能な臓器が増えれば救える子どもたちも増えるでしょう。

移植医療の未来を考えると、この「再起動しない超酸素保存」という新しい考え方は、今後の医療のあり方そのものを大きく変える可能性があると言えるでしょう。

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元論文

Rapid Recovery of Donor Hearts for Transplantation after Circulatory Death
https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2500456?logout=true

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部