この丁寧な処置によって、心臓は拍動しないまま、新鮮さを保ったまま長時間安定した状態を維持できるようになりました。
十分な処置が終わった後、心臓は速やかに体外へ取り出され、氷で冷やされた状態で移植先の病院へ搬送されました。
では、この新しい方法の効果はどのようなものだったのでしょうか?
実際に研究チームは2024年11月から、このREUP法を使った心臓移植を最初に3例で行いました。
その結果、3名の患者全員が問題なく新しい心臓を受け入れ、手術後の心臓機能も非常に良好でした。
移植後に拒絶反応が見られることもなく、手術中や術後の合併症も全く起きませんでした。
さらにチームはその後もこの手法で心臓移植を続け、2025年7月までに20件近い移植手術を行っています。
いずれも従来の方法と同等か、それ以上に良好な経過をたどっています。
特筆すべきは、この方法で保存した心臓が4時間以上、最長で8時間にわたり移植可能な状態を保つことができた点です。
これまで心臓移植では、提供後約4時間以内に移植することが推奨されていましたが、その時間が倍近く延びたことで、遠くの病院にも心臓を運べるようになり、より多くの患者を救える可能性が高まっています。
ヴァンダービルト大学のチームは、この特殊な保存技術を活用して、実際に最大10時間まで心停止した心臓を移植に適した状態で維持できることも確認しています。
これにより提供可能な心臓の数を大幅に増やし、多くの命を救う道が開けました。
また、この方法はシンプルで低コストなため、世界中の医療施設での普及が期待されています。
今回の技術開発を主導した研究者の一人、アーロン・ウィリアムズ医師は、「この方法は、倫理的な問題を抱えた従来法と、高額で複雑な従来法の両方を解決するために考案された方法です。まさに心臓移植医療のゲームチェンジャーとなるでしょう」と述べています。
実は他の研究グループも、別の新たな手法を用いて心臓移植の課題に挑戦しています。