この政策は、参政党支持層に対する一種の「踏み絵」として機能する。党の国家観やイデオロギーを深く信奉する「コア信者」は、「国家のためなら仕方ない」「既得権益を壊すためだ」と、この政策を受け入れるだろう。

しかし、「我が子の薬代が上がるのは困る」という極めて現実的な動機で党を支持した「ライトな支持者」は、ここで初めて、党が掲げる「健康」という理念と、その政策がもたらす厳しい現実との間に横たわる、深い溝に気づかされる。

このOTC薬問題は、参政党の「イデオロギーの乖離」を最も象徴的に示すリトマス試験紙なのだ。党の成長は、今後、この溝をいかに糊塗し、あるいはライトな支持者を「教育」してコア信者へと転換させられるかにかかっている。

第6章:内部力学と時限爆弾──カリスマと新人議員の軋轢

党が抱えるもう一つの「時限爆弾」、それは「政治経験の乏しい新人議員」と「カリスマ的指導部」との間に予測される深刻な軋轢である。

2025年7月の参院選での躍進により、参政党からは多くの新人議員が誕生した。彼らの経歴は様々だが、国政レベルでの政治経験を持つ者は少ない。当選直後の彼らは「日本人ファースト」といった党のスローガンを忠実にSNSで発信し、党の方針に従う姿勢を見せている。

さらに、選挙後の国会活動を見ても、党の方向性は明確である。参政党の議員が提出した質問主意書は、「外国人土地取得規制」「教科書検定における近隣諸国条項」「LGBT理解増進法への懸念」「中国製太陽光パネルの安全保障リスク」「新型コロナワクチン接種の副反応」といったテーマに集中しており、党が掲げる反グローバリズム、伝統主義、安全保障強化、そして「身体の政治学」という核心的イデオロギーを忠実に実行に移している。

これに対する政府の答弁は、既存の法制度や専門家の評価に基づき現状を説明するものがほとんどであり、参政党が訴える「危機」と政府の「手続き的正当性」という、両者の認識の隔たりを浮き彫りにしている。