参政党HPより

序章:新しい「神話」の始まり

長年、私が日本の「宗教と政治」を研究する中で、その中心は常に創価学会と公明党であった。戦後日本が生んだこの巨大な宗教的政治団体は、強固な組織と信仰を基盤に、政治風景を規定する存在であり続けた。しかし、時代は変わった。21世紀に入り、社会の価値観が多様化する中で、創価学会のような「新宗教」はかつての勢いを失いつつある。

だが、日本人が精神的な支えへの希求を失ったわけではない。むしろ、組織や教義に縛られることを嫌う現代人は、旧来の「宗教」に代わり、より個人的で生活に密着した「スピリチュアルなもの」へと関心を移行させている。健康、食、環境、歴史の中に自らの生きる意味を見出そうとする、新しい精神性の潮流である。

この、組織宗教の衰退と個人的スピリチュアリティの隆盛という地殻変動の狭間で、一つの問いがあった。「拡散した個人のスピリチュアルなエネルギーを受け止め、再び政治的な力へと結集させる、新しい『受け皿』は現れるのか」。その問いへの鮮烈な答えが、「参政党」である。

2022年の参院選での彼らの登場は、かつての公明党とは異なる質の熱気を帯びていた。街頭演説会には、子連れの母親や健康意識の高い若者が詰めかけ、候補者の言葉に熱心にメモを取る姿は、まるでセミナーのようであった。

この現象を「ネット右派」「陰謀論」といったレッテルで片付けることは、176万票(2022年参院選比例代表)の獲得、そして2025年7月の参院選での大躍進という民意の重みを無視するに等しい。その陰で、公明党は歴史的な大敗を喫している。

本稿が提示する視座は明確だ。参政党とは、単なる政治団体ではない。それは、「反グローバリズム」という世界的思潮と、「スピリチュアルな自己探求」という現代の精神性が、「日本の国体と伝統」という物語を触媒として結びついた、新しい形の「スピリチュアルな国民運動」なのである。

第1章:誕生の必然性──世界の潮流と日本の土壌