現時点では、新人議員は党の方針に沿った活動を行っており、執行部との目立った対立は見られない。しかし、これは党が野党である現状だからこそ保たれている結束かもしれない。今後、彼らが個々の選挙区の利害や、より現実的な政策実現の壁に直面したとき、この一枚岩の状態が維持できるかは未知数である。

政策の「純粋性」と「現実性」の対立:党の基本方針は、支持者にとっては絶対の教義だ。しかし、新人議員は国会で政策の現実性を厳しく追及される。彼らが「現実的な路線」を模索し始めれば、それは支持者から「裏切り」と見なされかねない。 メディア戦略の対立:党の基本戦略は既存メディアを「敵」と見なす「アンダーグラウンド型」だ。しかし、国会議員は世論を喚起するために既存メディアとの関係構築も必要となる。これを「敵への懐柔」と捉える強硬な支持層との間に溝が生まれる可能性がある。 党の主導権争い:これまで党は神谷代表のカリスマによるトップダウンで運営されてきた。しかし、国会議員団が形成されれば、彼らは「国民の代表」という別の正統性を手に入れる。党の路線や資金をめぐる主導権争いが起きるのは、多くの新興政党が経験してきた道である。

この軋轢は、参政党の「成功」が生み出す必然的なジレンマだ。党が成長し、多様な人材を惹きつければ惹きつけるほど、創業者一人のカリスマで党をまとめ上げることは困難になる。

この党内に埋め込まれた時限爆弾を平和的に解除できるかどうかが、党の真の成熟度を測る最初の試練となるだろう。

終章:もし参政党が政権を取ったら──日本の未来、世界の分断

最後に、思考実験として「もし参政党が政権を担う日が来たら、日本はどう変わるのか」を、より詳細にシミュレーションする。

第一節:「最初の100日間」──日本を襲う衝撃

「神谷内閣」が発足したその日から、日本の政治風景は一変する。まず、財務省、外務省、厚生労働省、文部科学省といった主要官庁には、党の理念に忠実な人物か、あるいは既存の官僚機構を「破壊」することに躊躇のない民間人が、大臣や副大臣、政務官として送り込まれるだろう。