そして、矢継ぎ早に「最初の仕事」が断行される。総理による所信表明演説では、「戦後レジームからの脱却」と「真の日本の主権回復」が、高らかに宣言される。具体的な行動として、WHO(世界保健機関)のパンデミック条約からの脱退交渉開始を指示。中国共産党に対しては「人権侵害に対する、最も強い言葉での非難」声明を発表。文部科学省には、新たな歴史教科書検定基準の策定を命じる。

この「電撃作戦」は、国内の既存メディアや官僚、学術界から猛烈な批判を浴びるだろう。しかし、内閣と党は、SNSと独自の動画チャンネルを通じて「我々は、国民との約束を果たしているだけだ。抵抗しているのは、国を売り渡してきた古い支配層だ」と支持者に直接語りかけ、むしろその対立を、自らの正当性を強化する燃料へと変えていく。

永田町と霞が関は、かつてない混乱と熱狂に包まれる。

第二節:日本の作り変え──「国守り」の名の下の内政

長期的な政権運営において、日本社会は、その根幹から作り変えられていくだろう。

経済:「財政規律」との決別:「財務省の支配」から脱却した政府は、MMT(現代貨幣理論)を事実上の国家方針とし、大規模な国債発行による財政出動を断行する。国内の食料自給率向上を至上命題とし、農家への手厚い補助金や、輸入食品への高い関税といった、強力な保護主義政策が打ち出される。経済は一時的に活性化するかもしれないが、やがて深刻なインフレと、国債の信認低下という巨大なリスクに直面する。 社会・文化:「伝統」の公式化:教育現場では、「日本神話」や「伝統的な家族観」を教えることが義務化され、教科書は政府の望む歴史観を反映したものへと一変する。選択的夫婦別姓や同性婚の法制化といった動きは完全に停止し、「ジェンダーフリー」という言葉は公の場から姿を消す。食品添加物や農薬、医薬品に関する安全基準は、国際的な基準から離れ、国独自の「食養生」に近い思想に基づいて再編される。社会の「文化戦争」は日常的な風景となり、賛同しない国民は「反日的」というレッテルを貼られ、社会の分断は決定的なものとなる。

第三節:「孤高の日本」──外交・安全保障の激変

外交方針の転換は、世界を驚かせることになる。

中国との関係:対中国政策は、「対話」から「対決」へと完全に舵が切られる。経済的なデカップリング(切り離し)が推進され、国内の中国人留学生や労働者に対する監視も強化される。台湾有事の際には、アメリカの意向を超えて、独自の防衛行動をとる可能性も示唆し、東アジアはかつてない緊張状態に陥る。 日米同盟の変質:同盟関係そのものは維持しつつも、「アメリカの言いなりにはならない」という「自主防衛」の旗印の下、在日米軍基地の縮小や、より対等な地位協定への改定を強く要求する。これにより、日米関係は安定した同盟から、常に緊張をはらんだ、取引的な関係へと変質していく。 国際社会からの孤立:WHOだけでなく、国連人権理事会など、国家主権を制約すると見なした国際機関や条約からは、次々と距離を置くようになる。日本は、国際協調の優等生から、「自国の利益」を最優先する、誇り高くも、孤立した国家「孤高の日本」へと変貌を遂げる。