このような場合、生物学的な偏りに行動上の偏り(性別に影響された出産行動)が拍車をかけ、統計的に見た偏り現象を一層際立たせているかもしれません。
今回の研究は、「赤ちゃんの性別は基本50/50」という従来の常識に一石を投じる発見と言えます。
もちろん、「3人男の子が続いたから次も必ず男の子」という絶対的な決定論ではありません。
上記の通り確率はせいぜい60%程度であり、依然かなりの部分は偶然に左右されることも事実です。
しかし、「次こそ女の子が欲しいからもう一人…」と考える場合に「その確率は半々より低いかもしれない」という視点は、家族計画を考える上で知っておいて損はないでしょう。
オックスフォード大学の人口統計学者ジョシュア・ワイルド(Joshua Wilde)氏は、「子どもの性別が続いている家族には次の子も同じ性別になる可能性が少し高まることを伝える必要があるかもしれない」とコメントしています。
実際、今回明らかになった母親ごとの性別の偏りは、科学的にも興味深いだけでなく、将来的には産科医療やカウンセリングの現場で両親の心構えに影響を与える可能性があります。
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元論文
Is sex at birth a biological coin toss? Insights from a longitudinal and GWAS analysis
https://doi.org/10.1126/sciadv.adu7402
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
ナゾロジー 編集部