「何を言ってるんですか? 国民の怒りも、左右の過激化も、ロシアが工作して生まれたもので、ウチの国のせいじゃないですよ?」
「なぜロシアの工作を非難せず、日本の社会に問題があったみたいに書くんですか? みなさーん、この著者は親露派ですよー!」
……と。歴史学でも、ワイマール共和政の中道路線が支持を失い、極右と極左が伸びて右が勝利する過程の分析は多くあったが、そんなのはぜんぶ「コミンテルンの工作だった」と、呼ぶに等しい主張が広まってゆくわけだ。
そこで止まれば、まだいい方である。報道を引用した小泉進次郎氏も、河野太郎氏も、首相になる可能性のある政治家だ。彼らが将来、意に沿わない結果が出た選挙に対して、
「後で調べたら、外国がSNSで介入していたので、この選挙は無効にする」
と、言い出すかもしれない。煽りや誇張ではなく、「進んだEU」で、現に起きていることだ。
以前も紹介したが、日本の同盟国であるアメリカのヴァンス副大統領は、ルーマニアでの「選挙無効」の判定こそが、外ではなく内から来る民主主義への脅威だとして、強く欧州を叱責した。

AfDは「ヒトラーとスターリンの同盟」を再来させるか|與那覇潤の論説Bistro
前回の続き。『文藝春秋』のコラムをドイツ政治史の古典で書いたのは、もちろん2月の同国の総選挙で、極右と呼ばれるAfD(ドイツのための選択肢)の躍進が予見されていたからである。
よく指摘されるが、2013年に反EU政党として結成され、近年はむしろ「親露派政党」として知られるAfDは、旧東ドイツの地域で圧倒的に強い。も...