さらに、欧州5大リーグのブランド力は、放送権料やグローバルなファン基盤に支えられており、2023年のプレミアリーグの放送権収入は約20億ポンド(約3,900億円)に達したと推定されている。
これに対し、サウジリーグの国際放映権収入はプレミアに比べて微々たる規模であり、数百万ドル規模にとどまるとの報道もある。逆の視点で言えば、その程度のニーズしかないとは言えないだろうか。実際、ガラガラのスタジアムでのプレーを余儀なくされた選手がモチベーションを失い、高額年俸を捨て欧州に舞い戻る例も出て来始めている。

Jリーグの対抗策
Jリーグは、欧州や中東に比べ資金力で大きく劣るが、独自の強みを持っているリーグでもある。
まず、若手育成の面だ。今夏だけで2桁にも上ろうかという勢いの日本人選手の欧州移籍のケースを見ると、選手輸出モデルの強化は急務だろう。Jリーグは多くの選手を欧州5大リーグに送り出し、2025年6月のAFCベストイレブン候補に4選手(ボルシアMGの板倉滉、スタッド・ランスの伊東純也、レアル・ソシエダの久保建英、NECナイメヘンの小川航基)がノミネートされるなど、国際的な評価が高まっている。
例えば、セルティック時代の古橋亨梧(現バーミンガム・シティ)は2022/23シーズンに27ゴールを記録し得点王となり、Jリーグの育成力を証明してみせた。Jクラブは育成への投資を増やし、欧州クラブとの提携を強化することで、選手の市場価値を高め、移籍金収入を増やすべきだろう。7月8日に、推定移籍金500万ポンド(約10億円)で川崎フロンターレからトッテナム・ホットスパーへの完全移籍合意が報じられた日本代表DF高井幸大のケースが理想的だ。
次に、地域密着型の経営がJリーグの競争力を支える重要な柱だ。Jリーグはホームタウン制度を活用し、ファンエンゲージメントを強化。2024シーズンのJ1平均観客動員は約1万8,000人で、地域イベントやスタジアム体験の充実が寄与している。中東各国リーグがスター選手に依存するのに対し、Jリーグはコミュニティーとの絆で収益基盤を安定化できる。例えば、川崎は地元企業や商店街との地道な連携を根気強く続けた結果、2023年にはクラブ収益を約50億円に伸ばした。