カタールでも、外国人枠(4人+AFC枠1人)による選手起用が続き、若手の成長機会が限られている。これが代表チームの弱体化につながれば、国家ブランディングの目的が絵に描いた餅に終わる可能性がある。
さらに、国際的な批判も課題だ。カタールW杯ではスタジアム建設に伴う労働者の死亡事故や人権侵害が指摘され、「スポーツウォッシング」との批判が高まった。サウジアラビアも同様の批判を受け、2025年6月のW杯予選プレーオフ開催地選定では、カタールとサウジアラビアの決定にインドネシアやイラクが反発したことが一部で報道された。こうした批判が積もり積もれば、投資意欲を減退させる可能性も考慮する必要がある。

欧州クラブの対抗策
欧州クラブは、中東の金満補強に対抗するため、ファイナンシャル・フェアプレー(FFP)による財政管理や確立されたブランド力を活用し、持続可能な成長を模索している。FFPはクラブの収入を超える支出を制限し、PSGやシティも過去に違反警告を受けた。これにより、中東資本のクラブは無尽蔵な投資が厳しくなり、欧州クラブは競争力を維持できる。
例えば、バイエルン・ミュンヘンやレアル・マドリードは、スポンサー収入やスタジアム収益を最大化させ、並行して若手育成にも注力している。2023/24シーズン、バイエルンはイングランド代表FWハリー・ケインをトッテナム・ホットスパーから、推定移籍金1億ユーロ(約171億7,000万円)で獲得したが、これはクラブに収益をもたらす戦略的投資だった。
また、欧州クラブはアカデミー強化で長期的な競争力を確保している。日本代表MF久保建英も学んだバルセロナの育成組織「ラ・マシア」やアヤックスのユース組織は、スペイン代表MFガビやオランダ代表MFフレンキー・デ・ヨング(ともにバルセロナ)といった優秀な人材を輩出し、移籍金収入も生んでいる。中東クラブが即戦力を求める中、欧州は自前で育てた選手で差別化を図っている。