カタールでは、パリ・サンジェルマン(PSG)を所有するカタール・スポーツ・インベストメント(QSI)が2011年から巨額投資を行い、欧州トップクラブの競争構造に影響を及ぼしてきた。UAEも同様に、アブダビ・ユナイテッド・グループが2008年にマンチェスター・シティを買収。シティは2022/2023シーズンの欧州CL(UEFAチャンピオンズリーグ)を制し、欧州王者にまでになった。いまや中東諸国の資本は、欧州のピッチの隅々にまで浸透している。

一方で、若手育成や自国選手の出場機会の減少といった課題も指摘されている。外国人枠の拡大によって競争力は高まるものの、土台となる育成システムの整備が追いつかず、各国代表のパフォーマンス低下や将来の人材難が懸念されている。カタールでは国立のアスリート養成機関「アスパイアアカデミー」を通じた若手育成に注力しているが、やはり各クラブでは外国人選手依存度は高い。


FIFAワールドカップトロフィー 写真:Getty Images

金満補強の持続可能性には疑問

中東クラブの金満補強は、短期的にはリーグの注目度や収益を向上させる効果があった。サウジリーグはロナウドの加入後、観客動員やスポンサー収入が増加し、2022年のFIFAワールドカップ(W杯)カタール大会では65億ドル(約8,973億円)の経済効果が想定された。しかしながら、長期的な持続可能性には疑問が残る。

まず、巨額投資はオイルマネーに依存しており、原油価格の変動や、世界的な再生可能エネルギーへの転換がリスク要因となる。例えば2020年の原油価格急落時には、中東諸国のスポーツ投資予算が一気に縮小した過去がある。

また、外国人選手の大量流入は国内選手の育成を阻んでいるという声もある。サウジアラビア代表のロベルト・マンチーニ前監督(2024年10月退任)は退く直前の9月に、国内リーグで代表選手の出場機会が不足していると指摘。「20人がベンチに座っている」と述べ、クラブと代表の連携強化を求めた。