また生き残る子供が増えたぶん両親の運ぶエサの量も増やさねばなりませんが、両親の狩猟能力が突然上昇するわけではないからです。

一方で両親から授乳する場合の悪玉菌のリスクは確実に増えてしまいます。

研究者たちは両親が授乳できるようになるメリットよりも、悪玉菌を排除できないデメリットのほうが大きいと結論しています。

今回の研究は、これまで進化論的に考えられてきた「オスの授乳」がない理由を、細菌叢の伝達という現象を軸に数学的に証明したものです。

全ての理由を細菌叢のせいにすることは多少強引に感じるかもしれませんが、母親のみからの授乳が悪玉菌を除去するフィルターとして働くという点については、目から鱗と言えるでしょう。

全ての画像を見る

参考文献

Mathematical Theory Suggests Microbial Role in Male Mammal Milk Production
https://www.technologynetworks.com/tn/news/mathematical-theory-suggests-microbial-role-in-male-mammal-milk-production-388227

元論文

Maternal transmission as a microbial symbiont sieve, and the absence of lactation in male mammals
https://doi.org/10.1038/s41467-024-49559-5

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部