結果、両親が授乳するタイプでは悪玉菌が世代を超えて継承され、両親から流れ込む悪玉菌の種類が増えると死亡率が上がり、人口全体も減少していきました。

一方、母親のみが授乳するタイプでは世代が経過するに従い、悪玉菌の存在が集団から徐々に排除されていくことがわかりました。

母親からのみ授乳を受ける場合、悪玉菌は継承されても、先に述べた浄化作用のお陰で減る場合があります。

しかし両親から授乳を受ける場合、乳児は母親に加えて父親の悪玉菌も受け取り、母子ともに悪玉菌がなかった場合でも、父親から乳児への感染が起こる危険性が常に付きまといます。

また両親から授乳するタイプでは母親からのみ授乳を受けるタイプと違って浄化現象が起こりません。

そのため両親が授乳するタイプでは悪玉菌はいつまでたっても集団から排除されず、悪玉菌の感染者は増え続ける一方となりました。

この結果は、母親からのみ授乳を受けるスタイルを維持することには本当に集団から悪玉菌を取り去るフィルターの役割があることを示しています。

ただ生命の進化は常に利点と欠点の比較によって起こります。

たとえ悪玉菌が増えてしまっても、オスの授乳による栄養的な補助のほうが利点が多い可能性も考えられます。

そのため次に研究者たちはオスの授乳による栄養的な効果がどの程度生存率を上げるかを調べることにしました。

結果、オスの授乳は確かに栄養面での貢献はあり、乳児は受け取れる乳量が増えるにつれて生存率が上がっていきました。

しかし乳量による恩恵は正比例的なものではありませんでした。

乳児の生存は乳量以外にもさまざまな要因により決定されます。

乳量が2倍になって乳児期の生存率が2倍に増えても、その後のエサが2倍になるわけではないからです。

たとえば狩猟動物の場合、両親が授乳して乳児の生存率が増えても、その地域にいるエサとなる他の動物が増えてくれるわけではありません。