なぜ諦めたのでしょう?
イギリスのヨーク大学(York)の研究は、哺乳類においてメスだけが授乳を行いオスが授乳を行うように進化しなかった理由を数学的に解明しました。
哺乳類が乳児を育てるにあたり、オスも授乳できた方が生物としては都合がいいはずです。
たとえば育児中のメスが病気で栄養失調になったり育児放棄をしたり、あるいは死んでしまった場合も、オスが授乳できれば乳児は生き残れるからです。
オスにも乳腺は存在しており、生物学的なメカニズムとしてオスの授乳が難しいというわけでもありません。
にもかかわらず、なぜオスの授乳は起きないのでしょうか?
研究内容の詳細は2024年6月27日に『Nature Communications』にて公開されています。
目次
- 「オスの授乳」が起こらない理由と進化論
- 「オスの授乳」が起こらない理由を数学的に解き明かす
「オスの授乳」が起こらない理由と進化論
パパはなんでおっぱいでないの?
この疑問を1度は尋ねた人は多いでしょう。
哺乳類において自然環境でのオスの授乳が確認されているのは、ダヤクフルーツコウモリ (Dyacopterus spadiceus)ただ一種でありその他全ての哺乳類はメスだけが授乳を行います。
しかし逆を言えば、オスが授乳するような進化は決して不可能ではないことも示しています。
少し考えただけでも、オスが授乳できるようになることの利点は数多くあります。
たとえば授乳中のメスが死んでしまった場合、オスが授乳することができれば子供を救うことができます。
またオスとメスの双方が授乳可能であることは、栄養供給量の面からみても有利となります。
また哺乳類のどのオスにも遺伝的に乳腺組織があることが知られています。
たとえば乳汁漏出症を発症した人間の男性では、母乳が勝手に漏出してしまうことが知られています。
オスの授乳を起こすための遺伝的ハードルは意外にも低いのです。