このように感じるのは、私が当事者ではなく、しかも数年間の空白期間を置いて相双地域にやって来たよそ者だからなのだろうか。
新天地と時間の流れ
宿泊したほっと大熊がある大熊町交流ゾーンは、整然とした新天地だ。まず宿泊施設が新しいだけでなく、スマートで気が利いている。隣接する大熊町役場と、いとこ関係にある施設なのが一目で分かる一体感もある。
ほっと大熊の駐車場を出たところに、罹災した人たちが暮らす大川原第一災害公営住宅の街区がある。これは町がURとともに基盤整備から進めてきたプロジェクトで、家屋のすっきりした造りだけでなく、敷地内には芝が植えられ、せせらぎのようなものまであり、仮設住宅とは一線も二線も画すものであるのが一目瞭然だった。
災害公営住宅の東側には、大熊町子育て支援住宅と大川原再生賃貸住宅がある。どちらも帰還したり移住や転入する人のための公営住宅で、子育て支援住宅は18歳までの子と同居する子育て世帯を対象に用意されている。2025年7月初旬現在、子育て支援住宅は空きなし、再生賃貸住宅は3LDK(車いす専用)棟が一軒だけ空いている状態だ。

大川原第一災害公営住宅
大熊町の人口は現在約9,900人で増加傾向にある。このうち町内居住人口は1,400人台で、東電の社員を除くと帰還者は約310人、新規転入者は約680人だ。新規転入者の比率が大きい背景に、移住支援金、住宅購入やリホーム補助金、子供医療費の助成(無償化)、起業支援金などの充実がある。
また双葉町も大熊町同様に人口が増加していて、こちらも支援金等による移住者へのバックアップが充実している。私が変貌ぶりに驚いて道に迷った大野駅は双葉町にあり、駅から500mほどの場所に整然と戸建て住宅が並んだ大野南再生賃貸住宅がある。
とはいえ、ほっと大熊や大野駅の周辺を離れると人の気配が薄れたり、消えてしまう。こうした事情は他の自治体の鄙びた場所と変わらないかもしれないが、常磐線の線路を越えると帰還困難区域があるため脇道に入ることができず、道をひたすら真っ直ぐ進むほかなくなるのは、大熊町や双葉町固有の問題だ。