つまり、ADHDのタイプによっても脳の構造や行動特性に違いがある可能性があるのです。
それでも、この研究が私たちに教えてくれたことは非常に重要です。
今回の結果は、「薬を飲めばADHDの症状が簡単に治る」というシンプルな期待に対して明確に疑問を投げかけています。
むしろ、「薬物治療はADHDの症状そのものではなく、脳の別の側面に影響を与えている可能性がある」という新しい視点を提供しているのです。
私たちの脳は非常に複雑で、ある部分の構造が変化してもそれがすぐに行動や症状に現れるとは限りません。
しかし、その複雑さの背後には、まだ解明されていない多くのメカニズムが潜んでいる可能性があります。
今回の研究結果を踏まえると、ADHDの治療法やサポート方法を考える際には、「脳の構造的変化」と「症状改善」を切り離して、それぞれを詳しく調べていく必要があるでしょう。
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元論文
How psychostimulant treatment changes the brain morphometry in adults with ADHD: sMRI Comparison study to medication-naïve adults with ADHD
https://doi.org/10.1016/j.pscychresns.2025.111992
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
ナゾロジー 編集部