これはまさに、私たちの体が過去にどれだけストレスを感じていたかを正直に記録している「ストレス履歴書」のようなものです。

研究チームはこうして採取した髪の毛から、参加者の慢性的なストレスレベルを調べました。

その結果、非常に興味深いことが明らかになりました。

「月曜日に不安を感じた」と答えた参加者は、その後に採取した髪の毛に含まれるコルチゾール濃度が、他の曜日に不安を感じた人よりも平均で約23%も高かったのです。

この差は単なる偶然ではなく、年齢や性別、季節や髪質、喫煙習慣など、ストレスに関係しそうなさまざまな要因を差し引いてもなお、統計的に明確な結果として現れました。

さらに意外な発見は、この「月曜日ストレス反応」が現役で仕事をしている人だけでなく、既に退職して仕事から離れた高齢者においてもほぼ同程度に認められたということでした。

研究チームは、退職後には月曜日特有のストレスは自然と減少するだろうと予測していましたが、実際には退職者でもストレス反応が明確に見られたのです。

研究リーダーのタラニ・チャンドラ教授は、「退職後も続く月曜日ストレス反応は、私たちが『月曜日』という社会的リズムをいかに強く身体に刷り込んでいるかの証拠です」と述べています。

また、今回の研究ではもう一つ驚くべき結果が示されました。

実は月曜日は他の曜日に比べてそもそも不安を感じる人の割合が多いという特徴がありますが、だからといって「単に月曜日は不安を感じる人が多いから、ストレスホルモンが多く検出される」という単純な理由ではないことが判明したのです。

詳細なデータを丁寧に分けて調べた結果、月曜日にコルチゾールが増える理由のうち、単に「月曜日は不安を感じる人が多い」という事実で説明できたのは全体の約23%しかありませんでした。

言いかえれば、「不安を抱く人の割合が高いからコルチゾールも高い」という単純な因果では、4分の1程度しか説明できなかったのです。