たとえば、「IPCCの報告書は、各国が承認・採択した最新の科学的知見として(中略)……政策的に中立であり、特定の政策の提案を行わないという科学的中立性を重視しています」との記載があります。

あたかも「IPCCこそが唯一の公的な気候変動を議論する場であり、この報告書に誤りがあるはずがない」と言いたげな表現です。

また、日本人は「国連の機関」「各国政府の承認」「世界の潮流」といった言葉に弱く、私自身も「世界の潮流に遅れてはならない」と感じてしまいがちです。その意味で、「脱炭素は世界の潮流である」と思わせる効果も狙っているように見えます。

そもそも、「科学的知見に基づく」と言いながら、冒頭から権威を前面に出してくるあたりに、すでに一種の“あやしさ”を感じてしまいます。

「ココが知りたい地球温暖化(国立環境研究所)」について

ここからは、私がいくつか疑問に感じた項目について見ていきたいと思います。

Q:二酸化炭素が増えると地球が温暖化するというはっきりした証拠はあるのですか。

A:過去数十年の間、地球ははっきりと温暖化しており、その主な原因は二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの増加以外に考えられません。これ自体が、何よりの証拠です。

2021年にノーベル物理学賞を受賞された真鍋淑郎さんの研究で、大気中の二酸化炭素濃度が2倍に増えると地表付近の温度が2℃程度上がるという計算結果を得ました。人間活動以外に地球の温度に影響を与える要因には、太陽活動の変動、火山の噴火、気候の内部変動(何も原因がなくても自然に生じる変動)がありますが、どれも実際に起きた温暖化を説明できません。

ココが知りたい地球温暖化(国立環境研究所)-温暖化の科学

どの説においても、実際に観測された温度変化を完全に説明できていないという点は、確かに正しいと思います。しかし、説明できないのはCO2起因説も同様です。

たとえば図2のグラフを見ると、2020年以降に平均気温が急激に上昇していますが、これは温暖化とは関係のない火山活動など、自然変動の影響が大きいのではないでしょうか。