このように「夢の世界」と「現実の世界」がリアルタイムでつながることが分かった今、私たちの夢に対する理解はどのように変わっていくのでしょうか?
学習・治療・創造性に波及する可能性

今回の研究によって、夢を見ている人と現実の人がリアルタイムでコミュニケーションできる可能性が示されました。
これは夢という不思議な体験の研究にとって、非常に大きな進展です。
なぜなら今まで夢の研究は、目が覚めた後に夢を思い出してもらい、その記憶を頼りにするしか方法がなかったからです。
しかし私たちが夢を思い出すとき、その内容は実際に体験したものとは違っていたり、大切なところが抜け落ちたりします。
今回の新しい手法を使えば、夢を見ているまさにその瞬間にコミュニケーションをとることが可能になるため、夢に関する情報がより正確で、鮮明に手に入ることが期待できます。
また、この研究は私たちが眠っている間の脳の働きについて、新しい可能性を示しています。
これまで眠りは、外の世界から遮断されて、記憶や感覚の入力がほぼ止まる状態だと考えられてきました。
ところが、今回の実験で眠っている人が質問に答えたり、簡単な計算問題を解いたりできるという事実は、眠っている脳もある程度外の情報を受け取り、処理できることを示しています。
これは睡眠中の脳の柔軟性や可能性が、私たちが思っていた以上に大きいことを意味しています。
研究者たちは、この夢と現実のコミュニケーションが可能になったことで、夢の内容をある程度コントロールしたり、夢の中で学習や記憶の強化をしたりする応用ができるのではないかと期待しています。
例えば、トラウマや悪夢に苦しんでいる人が夢の中で専門家と会話をすることで、症状を和らげる治療法として応用できる可能性があります。
また、クリエイティブな活動をしている人が夢の中でアイデアを膨らませたり、練習が難しいようなスポーツや楽器の練習を夢の中で行ったりすることも、理論上は可能になるかもしれません。