研究者たちは、レム睡眠の状態にある被験者に対して、外からさまざまな質問を送りました。

面白いのはその方法です。

言葉で声をかけるだけではなく、まぶた越しに光を点滅させたり、短い音を鳴らしたり、指先に触れたりといった刺激を、あらかじめ決められたパターンで送ることで質問を伝えました。

被験者たちは事前にそのパターンを覚えているので、夢の中でその刺激を感じ取った時に、「今、質問されている!」と気付くことができたのです。

では、夢の中の人はどうやって返事をしたのでしょうか。

それは、先ほど練習していた眼球運動や顔の筋肉を使った合図です。

「はい」や「いいえ」なら眉間を動かしたり頬を動かしたり、数字の回答なら左右の眼球運動の回数で表現するというものでした。

研究者が特に用意した質問の多くは、単純な計算問題や回数を数えるといった「明確な正解があるもの」でした。

最も印象的な例は「8引く6は?」という簡単な算数の問題です。

夢を見ている被験者に対して「8引く6」と問いかけると、被験者は夢の中にいながら「2」という正しい答えを眼球運動の回数によって返してきました。

目覚めてから答えを言ったのではなく、夢を見ているまさにその瞬間に回答していたのです。

まさに、夢の中と現実がリアルタイムで結ばれた瞬間でした。

このような実験は複数のグループで何度も繰り返され、最終的に36人中6人の被験者が夢を見ながら質問に正しく答えることができました。

一見すると成功率は高くないように見えますが、夢の中にいる人と会話すること自体が前代未聞の試みであり、複数の研究機関で独立に成功した事実は画期的と評価されています。

研究チームは、この夢の中で現実とコミュニケーションが可能になる現象を「インタラクティブ・ドリーミング(対話型の夢)」と名付けました。

この研究結果に対し、研究リーダーであるパラー教授は、「ほとんどの人は『無理だ』と思うでしょう。質問した瞬間に目覚めるか、理解できないはずだと。しかし結果は違いました」と驚きを語っています。