玉村:社内で部門間の目標が相反してしまうケースもあります。 例えば、

・倉庫責任者の鈴木さんの目標が「期末在庫を30%削減する」 ・営業リーダーの佐藤さんの目標が「売上●●●万円を達成する」

だった場合、鈴木さんが在庫を減らせば、商品の欠品が生じることによって佐藤さんの目標達成は難しくなってしまいます。 こうした対立はどう解決するのでしょうか?

羽石:ご提示のケースは、そもそも目標設定自体に問題がありますね。 こうした場合、個々の目標に「他部門への貢献」という視点を加えるべきです。 例えば、鈴木さんの目標を「営業部門で納品遅延をゼロに保った上で、在庫を30%削減する」という設定にすれば、利益相反は起きにくくなります。

一方で、私たちはあえて利益相反を起こさせることもあります。 例えば、インサイドセールスには「とにかくアポイントを量産しろ」、営業には「獲得したアポイントから契約を取れ」と指示する。 すると「質の低いアポばかりだ」「いや、量が足りない」と必ずぶつかります。 しかし、その摩擦から上がってくる情報こそが、次の有効な施策につながるのです。 意図のある利益相反は、組織を強くする上で有効な手段となり得ます。

棚ぼた達成は評価する?:個人の悩ましい評価ケース

玉村:先ほどの話にも関連しますが、マーケティング担当の山田さんが非常に質の高いセミナーを実施し、目標を大幅に超える見込み客を獲得したとします。 その結果、営業担当の田中さんは、渡された質の高い見込み客に普通にアプローチしただけで、苦労せず目標契約数を達成できました。 この場合、田中さんは100%目標を達成したと評価されるのでしょうか。 彼の努力というより、山田さんのおかげという側面が強いですが。

羽石:はい、約束通り100%達成として評価されるべきです。 これも外部要因の話と同じで、一度設定したゴールポストを後から動かしてはいけません。 それをやってしまうと、信頼関係が崩れ、あらゆる「誤解」や「錯覚」の原因になります。