その上で、上司の業務リテラシーが足りないという問題は当然起こり得ます。 リテラシーが不足しているために、現実的ではないKPIを設定してしまうことはあるでしょう。 その場合どうするかというと、私たちは「軌道修正するスピードを上げる」ということを重視します。 評価項目は四半期に一度は見直すべきですし、必要であれば期中にでも変える。
上司にリテラシーがないから結果が出せない、と部下が言っていても状況は好転しません。 部下は「このやり方では難しい」という事実情報をしっかり上に上げ、上司にもトライアンドエラーを経験させて、結果設定の能力を上げてもらう必要があります。 そのためにも、上司は部下が情報を上げやすいように、感情的にならず、否定しないコミュニケーションを徹底することが求められます。
玉村:なるほど。では、私の古巣でもあるのですが、事務職のように、日々の業務を間違いなくこなすことが主で、なかなかKPIを設定しづらい仕事については、どのように目標を設定すればよいのでしょうか。
羽石:事務職のような仕事の場合は、2つのアプローチがあります。 一つは「どういう状態であれば完璧か(OKか)」という完成形を具体的に定義し、その状態を維持できているかを評価します。 例えば「給与支払いに遅滞やミスがない」「書類が定められた場所に保管されている」といったことです。 もう一つは、業務をタスク単位に分解し、その処理量で評価する方法です。
玉村:給与計算など「できて当たり前」で、ミスなく続けることが評価される仕事だと、ずっと評価は変わらないのでしょうか。
羽石:いいえ、そこでも評価は変わるべきです。 その「当たり前」を継続してくれること自体に価値があるのなら、それに応じて評価も上げていくべきです。 あるいは、会社として求めるレベルが実は少しずつ上がっているのに、それを伝えていないだけかもしれません。 リーダー側が「この人に何を求めているのか」を常に考え、評価に反映させていかないと、お互いの間に「誤解」が生まれてしまいます。