第1に、政治的結果を生み出す軍事的原因を見つけることの大きな障壁を考えれば、その便益とコストのバランスに差がほぼないケースでは、めったなことがなければ、武力に頼ることは慎むべきだということです。
第2に、戦略はシンプルにすべきです。複雑な戦略は失敗への道です。
第3に、文民の政策立案者は軍事作戦への理解が必要です。戦術、兵站、作戦ドクトリンの知識がなければ、シビリアンは責任を全うできません。
第4に、戦略目標は、できる限り物質的な利益に絞るべきです。信ぴょう性や名誉が国家の存亡を脅かすことは、滅多にありません。
そしてベッツ氏は次のような戒めを記しています。
「戦略は選ばれた手段が目的に対して不十分であることが判明した時に失敗する。このことは間違った手段を選んでしまったためか、目的があまりに野心的であるか、あいまいであるために生じる。戦略は、手段のメニューを拡大するのと同じ程度に目的の範囲を限定することを平時の計画において考慮するならば、より多くの場合において救うことができる」
“Is Strategy an Illusion?” International Security, Vol. 25, No. 2, Fall 2000, pp. 46-50
戦略を成功させることは、国家の存亡にかかわります。残念ながら、「戦略科学」への道のりは険しそうですが、理論的・経験的な研究を積み重ねることでしか、戦略の普遍的なパターンを明らかにすることはできないでしょう。
戦略研究におけるサイエンスとアート
こうした戦略研究へのアプローチは、もちろん、そのアートの側面を無視することではありません。
ブローディ氏は、論文「科学としての戦略」を発表した約10年後、海軍大学で「アート(術)とサイエンス(科学)としての戦略」という興味深い講演を行っています(“Strategy As An Art and A Science,” Naval War College Review, Vol. 12, No.2, February 1959)。ここで、かれは2点の注目すべき指摘をしています。1点目は、科学としての戦略の後進性についてです。