元より多数の国から構成され意思決定が遅いと思われていたEUは早々と7/9までのディールを諦めている。EUは10%の一律関税はなくならないものと認識しており、その上で地理的に近いイギリスと似たような形で、米国への投資拡大と引き換えに自動車の関税軽減枠の獲得を目指している。また最終ディールがまとまらなくても暫定ディール(原則合意)と現状維持を求めていく。韓国も概ね同様であり、これらの主要国は③となるだろう。

いずれにしろ、今から米国の関税率は暫定一律10%から再び引き上げ局面に入ることが予定されている。とはいえ金融市場も「どうせ再延長だ」とは思っていても「どうせ一律10%だ」と織り込んでいるとも思われず、従って懸念材料としては「④にどれだけ先進国が含まれているか」が鍵となる。

先進国の中でも日本がその先頭にいることはどうも間違いないが、そうは言っても大量の先進国の④堕ちは想像しづらい気がする。これは内申点と同じ、相対評価だからである。

やはり違法だったIEEPA関税

余談となるが、本ブログはかねてからIEEPA(国際緊急経済権限法)に基づく、貿易赤字を理由に関税を掛ける論法に無理があると考えており、「トランプ政権の中にも雑な論法を使っているという自覚はあるだろうから、ローズガーデンの関税率は”吹っ掛けてみた”に限りなく近い」と述べてきたが、果たして5/28に米国の国際貿易裁判所(CIT)はIEEPAを根拠とした相互関税に違法判決を出している。

もっともトランプ政権は直ちに連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)に控訴し、CAFCは結論を出すまで関税の継続を認めたため、ゴールドマンが言うようにCITの違法判決は実効的には「ナッシングバーガー」であった。この裁判は1年以上かけて連邦最高裁までもつれ込む可能性が高く、そうなると連邦最高裁は保守系6名、リベラル系3名の判事から構成されるため共和党寄りであることが効いてくる。