一方、「解放の日」直前と同様の心理となるが、トランプ自身は自分で設定した締め切りが近付くにつれてまたしても煩雑な交渉に飽きてきたらしく、7月に入って間に合う数ヶ国を除く重要国には「20~30%の関税率」を提示する書簡を一方的に送り付けると言い出した。6月時点は延期に前向きだったにもかかわらず、である。この書簡を受け取るのは10ヶ国程度となる。

更にトランプによるとこの書簡は作成済であり、10~12ヶ国に対し、8月1日発効の10~70%の幅広い関税率を、7月7日に送付することになっている。「延期」に関しても、ベッセントのフレンドリーなコメントをトランプ自身の言葉が否定した場合は、後者を準拠すべきなのが原則である。実際ベッセントも「われわれは大統領の意向に従う。貿易相手が誠実に交渉しているかどうか判断するのは大統領だ」とトランプに追従することになる。

12ヶ国の内訳はさすがに明らかになっていない。8月1日までに駆け込み土下座も不可能ではないため最終解答ではないが、とにかく週明け以降、書簡を解読する時間帯に入る。

現時点のカテゴリー

整理すると、世界中の通商交渉の相手国は概ね以下のように分類されるのではないか。

① 一律10%で放免となる約100ヶ国 ② 7/9までにディール成立(10ヶ国以内) ③ 9/1まで交渉延長を認める ④ 誠意が認められず、関税率の書簡を送りつけて交渉終了(10~12ヶ国)

①は主に対米貿易黒字額がほとんどない小国である。主要先進国については不透明な密室の中での進捗があるともあまり思われず、②のメンバーはあってもあまり重要でない新興国になるだろう。

主要先進国の大半は③になると思われる。問題は誰が④に含まれるかである。トランプ政権は「交渉の誠意次第」と内申点並みに曖昧で主観的な表現を用いているが、素直に考えればこの通商交渉ラッシュにまともに参加すらしなかった国々ということになる。