「解放の日」に46%というかなり重い関税を課せられたベトナムも何とかディールに到達した。ベトナムは対米関税をゼロにする代わりに関税を20%まで下げてもらうことに成功した。

ただし、前回の記事でも強調したように、トランプ政権が広範な国々への一律関税に踏み切ったのは、そうしないとどうせ中国からの迂回輸出が行われるからであるからだが、ベトナムはまさにその最前線であり、従ってベトナムは迂回輸出阻止に対して何らかのコミットを見せなければならなかった。

ベトナムはゼロ関税を提案して断られた後に様々な定性的な迂回輸出対策を提示したと思われるが、結局「迂回輸出と認定された商品は40%関税」という着地となった。どのような商品が何を根拠に迂回輸出(第三国からの積み替え品)と認定されるかについては明らかになっていない。

ベトナムが迂回輸出の最前線という特殊性もあるとはいえ、このケースからは、ディールに到達しても相互関税が10%まで下がらないことがあることが判明したと言えるだろう。

またしてもトランプが飽きる

7月初旬時点での進展はこの程度である。

「解放の日」関税を主導したピーター・ナヴァロなどは当初「90日間で90件の交渉が成立する可能性」を見込んでいたが、これはさすが実務に疎い思想家らしいとも言うべき短慮である。

インドをはじめとしてディールが近い国も10ヶ国程度あるようだが駆け込みでディールのヘッドラインが飛ぶ可能性もあるか(ただし筆頭のインドについては報復関税をチラつかせるなど、難航しているとの観測もある)。

大半の国が間に合わないことが判明するとベッセントも「重要な18ヶ国との交渉を9/1のレイバーデーまでに」とゴールポストを動かした。ローズガーデン関税リストでは123ヶ国が10%の最低関税率となっていたが、ベッセントは約100ヶ国が10%で着地すると述べており、123ヶ国も100ヶ国も大して変わらない。