真面目に交渉を行ってさえいれば、関心・意欲・態度が下位12番以内に入ることはないはずだ。しかし、トランプ政権が書簡を送付する先として日本を例に挙げ、また「30~35%」という妙に具体的な数字を示したのが混乱を招いた。書簡組の具体的な関税率は素直に考えると「解放の日」への回帰になるはずだが、日本の35%が妙に高いのと、10〜70%というレンジの上限が「解放の日」の上限より高いところが気にならなくもない。

強硬な日本政府

実際、中国は別格として、今ラウンドの交渉で主要先進国の中で最も強硬で態度が悪かったのは日本政府である。

中国さえ含む大半の国は10%関税を既に所与として捉え、何かと引き換えに相互関税率の引下げ、また232条対象の自動車等についても免税枠の設定を追求してきた。それに対して日本政府は意外なまでに強硬であり、最後まで関税の完全撤廃を、少なくとも表向きには唱え続けた。

少なくとも自動車に関してはそもそも「解放の日」関税ですらなく232条対象なので、232条関税の存在を認めた上で免税枠の設定や拡大を交渉目標とするのが定石であり、232条対象なのに日本相手だけ免除させるというのはさすがに想像しづらいというか、そのような要求は米国側の担当者を大いに困らせることになったのではないか。

日本側が出せるカードでまず思い付くのが農産物のアクセス拡大であり、トランプ自身も度々それをヒントとして提示してきたのだが、運悪く農林色の強い内閣に当たったことでそれも困難となり、そうなるともはやカードの交換ではなくただ「説明」を行っていたようである。

そうなるとトランプ政権側から見て7/9が迫る中で「説明を聞く」行為はもはや時間の無駄なので、日本との交渉を一旦打ち切って後回しにした。ベッセントは日本との交渉の難航について「日本は参院選前だから」と述べており、言い訳とも、取りなしているようにも見える。その相手は当然、交渉の難航を見て激怒したトランプであり、ベッセントは日本を④から③に何とか持って行こうとしているようにも見えた。ただ、そう見えるところから「交渉の芸術」の一環だった可能性も否定されない。