もちろん、現代社会システムはある程度のフリーライダーを許容できる機能をもっている。国民年金の未納、国民健康保険の未払い、国連分担金の未払いなど各種のフリーライダーで明確なように、ある水準まではそれは許容できる。
しかしその水準を超えた瞬間にその制度や社会システムは全面的に崩壊する。日本の少子化動向から、当時の私はその水準突破の勢いを感じてきたし、2025年段階ではその傾向がますます強くなったような気がする。
人口反転のための議論の素材
私が提示する少子化克服のための議論素材は、以下の9点である。
子どもは公共財であるという認識を社会全体で共有し、子育てフリーライダーは認めず、社会総力で子育て支援を開始する。 子育ては最重要の価値ある仕事であるという認識を社会全体で共有し、子育て支援を最優先する。 少子化は個人の短期的な利益志向が社会全体の長期的不利益をもたらし、個人も不利益にさせるという社会的ジレンマにより「個人と社会」を認識する。 待機児童ゼロ作戦に集約される保育育児中心主義を超える。 「社会全体」で、男女間、世代間、世代内間、都市農村間、中央地方間における「共生」のあり方を「子育て共同参画社会」として追求する。 30歳以上の「社会全体」で20歳未満の子ども育成のために「子育て基金」を立ち上げる。
国民の受益だけではなく、国民の負担のあり方も論じなおす
国民の受益だけではなく、国民の負担のあり方も論じなおす。 少子化対策を超え、現在の沖縄県の合計特殊出生率1.50程度(当時は1.80)の社会を展望する。 「子育て共同参画社会」を経由して、最終的な「老若男女共生社会」を目指す政治のために、若者の意見がもっと反映されるように、地域代表制(衆議院)と世代代表制(参議院)の併用を核とした抜本的な選挙制度改革を始める。
佐賀県育児保険構想試案
このような制度的な提言を行った背景には、ちょうど佐賀県が全く独自の「育児保険構想試案」(図1)を発表していたからである。

図1 佐賀県育児保険構想試案 (出典)当時の佐賀県ホームページより ただし、『読売ウイークリー』(2007年3月4日):90より転載