15年後の今でもその理由は不明であるが、当時手持ちのNHKブックス既刊書を並べながら推測すると、先に発売されていた2冊のNHKブックスと拙著の内容が真逆だったことに思い当たった。それは大橋照枝『未婚化の社会学』(1993年)と大沢真理『男女共同参画社会を作る』(2002年)のフェミニズム系の書籍の存在である。

要するに、NHKブックスの「理念」である「時代の半歩先を読む」に照らした場合、「子育て基金」、「老若男女共生社会」、「子育てフリーライダー」、「G&G」といった新しい概念を使った拙著は、フェミニズム系の2冊とは完全に衝突して、「時代の半歩先」には届かないという判断が編集部に生まれたのだろう。

そこで、出版社としては政府の「男女共同参画社会」理念を受け止め、それを堅持したいから、私の本を絶版にすることにしたと推測することで、NHKブックスとは縁がなかったと納得した。これは今でも変わらない。

どちらが時代の半歩先を読めたか?

私のパラダイムではNHKブックスの「時代の半歩先を読む」とは整合しないから、品切れ絶版になったのだという判断したら、気持ちが軽くなったという記憶がある。ただし、私も近未来への視点を強く持っていたから、昨今話題の「独身税」論争を「子育て基金」が先取りしていたという自負はある。

「子育て基金」は「子ども・子育て支援金」より20年前に提唱

もっとも「独身税」という表現は俗称であり、正しくは税金ではない。少子化対策の一環として2026年4月からスタートする「子ども・子育て支援金」という制度によって、国民から納付してもらう仕組みになっている。

端的には、社会保険料の上乗せになり、独身の人のみが負担するものではなく、医療保険(健康保険)に加入していれば「子ども・子育て支援金」がそこに上乗せされるという仕組みである。

「子育て基金」制度

この時期の私は、独自に到達した新しい「子育て基金」制度や「適正人口社会」の周知のために、努力していた(金子、2004)。