家族への支出にも政治文化の差

高齢化率にも違いがあり、日本のそれが最高なので、社会支出も高齢者向けが最高であるが、家族向けの少なさとは対照的である。

とりわけイギリスとスウェーデンでは15%前後が家族への支出に充てられている。当時、少子化をほぼ10年で克服したフランスでも家族への支出は9%を超えていた。

日本の「少子化する高齢社会」

「少子化する高齢社会」では、高齢化率も高齢者数も増加することから、年金、恩給、高齢者医療、介護保険給付、老人福祉サービスは着実に増えてくる。直近のデータから社会保障給付の対象者別にみると、高齢者向けに全体の約70%、非高齢者には約30%の配分率になる。

一方で少子化対策に関連する「家族」では、出産育児一時金、育児休業給付、保育所運営費、児童手当、児童扶養手当などがここに含まれるが、当時の社会保障費全体に占める比率は5%前後であった。

高齢者への手厚い給付と比べると、次世代育成の掛け声が空しく響く。私はこの点を考慮して、財源の裏づけがない「子ども手当」だけではなく、既述のような社会全体での「子育て基金」制度の創設を1998年から主張してきたのであった。

10%の消費税率の扱い方

折から、参院選挙を目前に10%の消費税率の一時的軽減や廃止が話題になっている。1%が2.5兆円と見込まれるから、2%の5兆円を「児童・家族関係」に限定使用できないものかというのが「子育て基金」のアイディアの根幹にあった。

「おひとりさまの老後」は社会全体で育てられた次世代の働きで支えられる

子どもを生み育てる家族だけが養育費、教育費、学習費などを負担して、直接的な次世代育成という選択をしなかった個人や家族がその負担はゼロというのでは、公平性の点で疑問が残る。