“Stephen Walt Makes the Case for Appeasing Russia,” Atlantic Council, February 14, 2015

よろよろと戦争へと歩む夢遊病者たち

その後、ウォルト氏はフォーリン・ポリシー誌のブログ記事「リベラリストが招いたウクライナ危機」(2022年1月19日)において、再度、ウクライナ危機の分析と解決を以下のように述べています。長くなりますが、重要な指摘なので、いくつか区切って引用します。

(1)ロシアに妥協しない西側と悪化するウクライナ危機

「ウクライナ情勢はますます悪化している。ロシアは侵攻の構えを見せており、NATOが決してこれ以上東方に拡大しない完全な保証を要求している。交渉は明らかに成功していないし、アメリカとそのNATO同盟国は、ロシアが侵略を推し進めてきた場合に、同国に代償を払わせることを考え始めている。本当の戦争が今や現実味を帯びてきており、それは全ての当事者とくにウクライナ市民にとって、広範囲にわたりさまざまな影響をもたらすだろう」

(2)道徳と戦略の混同

「西側では、NATO拡大を擁護するとともに、プーチンだけにウクライナ危機の非難を浴びせることが当たり前だ…しかしプーチンだけにウクライナをめぐる現在進行している危機の責任があるのではないし、かれの行為や性格に道徳的な怒りをぶつけることは戦略ではない。さらなる強力な制裁を課しても、かれが西側の要求に屈することはないだろう。とにかく不快であるが、アメリカとその同盟国は、ウクライナが地政学的にどう連携するかが、ロシアにとって死活的利益すなわち武力を使ってでも守ろうとする利益にかかわること、プーチンが旧ソ連の過去のノスタルジーに愛着を抱く無慈悲な専制主義者になったわけではないことを知らなくてはならない」

(3)大国政治を無視する代償

「大国は国境付近に配置された武力に決して無関心ではいられないし、ロシアは、たとえ他の誰が責任者になろうとも、ウクライナの政治的連携には深く神経をとがらせるだろう。アメリカとヨーロッパ諸国が、このような基本的な現実を受け入れようとしないことは、世界が今日において、このような混乱に陥った大きな理由なのだ。そして、プーチンは、突きつけた銃口により大きな譲歩を引き出そうとして、この問題をさらに難しくしてしまった」。

(4)全能の幻想がもたらす愚行