言い換えれば、「幽霊の気配」は人間の誰もが持つ心のクセであり、感じてしまうこと自体におかしな点は何もないのです。

ただし、この研究には注意点もあります。

実験で与えた「誰かが入ってくるかもしれない」という暗示が控えめだったため、もしこれをもっと強い恐怖感を引き起こすようなものに変えたら、結果は違ってくるかもしれません。

また、生理的な測定だけでは、参加者の感じた恐怖や不安の質的な違いまでは区別できませんでした。

人が不安を感じたり気配を報告したりする方法は個人差が大きいため、より詳しく調べる必要があります。

こうした課題を踏まえて、今後さらに強い恐怖感や具体的なイメージを参加者に与える実験を行えば、「見えない存在」の感覚がどのように作られるのかがより鮮明になるでしょう。

人の脳が見えない誰かを作り出す仕組みを深く知ることは、私たちが抱く不安や恐怖と上手に向き合うためのヒントにもなるかもしれません。

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元論文

Sensing ghosts and other dangerous beings: uncertainty, sensory deprivation, and the feeling of presence
https://doi.org/10.1080/2153599X.2024.2305460

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部